ゆば甚　ゆば　特産品列島

健康食品として人気も高まっている「ゆば」を昔ながらの製造方法で全国に届けている会社が兵庫県にある。昭和６年からゆば一筋で製造を続けているのが松田甚兵衛商店の営む「ゆば甚」だ。

　「昔は町の豆腐屋さんのようにゆば屋さんが町に一つはあったものです。それが卸し先だった小さな乾物屋さんがなくなり、製造に手間もかかることから店じまいするところが多くなってしまいました。」

　三代目にあたる松田正司社長は周りのゆば屋がなくなっていく現状にめげず、こだわりを直接消費者に伝える直販を積極的に行なうことで事業を継続させているのだ。

　京都の一流ゆば料理店などへも商品を卸している同社だけにその質には自信がある。製造の際に最もこだわっているのは原材料の選定だ。国産の高い大豆を使っている商品は数多くあるが、国産だからうまいという単純な話ではない。国産大豆の粘り気、アメリカ産のあっさりした後味、カナダ産の色味などをそれぞれの大豆が持つ良さを考えてブレンドして使い分けている。大豆の味・特徴を熟知し、そして、湯葉作りにはかかせない〝水”にこだわってこそ本当にうまいものを作ることができる。

　同社ではこうして作り上げたゆばをシンプルに「生ゆば」で提供するだけでなく、すぐに「ゆば鍋」が作れるセットにした。また「豆乳入り」や「ゆば豆腐」などオリジナルの加工を施して提供している。中でも人気なのが地元の「丹波地鶏」と組み合わせ、上品な昆布かつおだしで仕上げた「ゆば丼セット」だ。体にも優しく、繊細な味がリピーターを増やしている。

　こだわりを貫きながら、新しい商品を生み出すことで松田社長は76 年続く「ゆば甚」を守り続けているのだ。